第15章 タイガーリリー
廊下に出てリビングの方へ身体を引きずるようにして歩く。
ドアを開けたら、ソファで蹲って泣いている小さな背中が見えた。
「…和也…」
泣き顔が俺を見上げた。
「大丈夫…思い出したから…」
「翔…」
「和也…おいで…?」
腕を広げた。
和也は泣きながら俺の胸に飛び込んできた。
「翔っ…」
「ごめん…頭がなんかグルグルしてて…」
「ううん…ううん…」
「好きだ…和也…」
「うんっ…俺もっ…」
俺の胸で泣く和也の身体をぎゅっと抱きしめた。
そのまま落ち着くまで、俺達はずっと抱き合った。
和也の涙が、熱い…
その後、落ち着いた和也は俺をベッドに寝かせた。
「どうする?病院行く…?」
「いいや…今日は、動きたくない」
「そっか…じゃあ、明日動けるようなら汐留行く前に病院いこ?マネに連絡しておくから」
「ああ…そうだな…」
和也の手をぎゅっと握りしめた。
「ありがとうな…和也…」
「ううん…」
記憶がどこまで戻っているのか、改めて確認した。
やっぱり今年の7月から8月までの和也の記憶がすっぽりと抜け落ちていた。
「なんで…だろうね…」
「わからない…」
思い当たることはあった。
けど、俺も和也もそれを口にだすことはなかった。