第11章 グレイscene4
ニノになにも話せなかった。
これ以上心配をかけることはできない。
ニノだって映画の撮影が始まって忙しい時期だ。
余計なことで心を削りたくない。
でも…
ニノは勘が鋭い。
その日から、ニノはそっと俺に寄り添っていてくれるようになった。
もちろんお互いのスケジュールが合う時だけだけど。
家に帰ってくると、俺の家のドアの前で座って待っていることもあった。
そんな日は決まって、鳥の死骸はなかった。
一緒にいると、電話の嫌がらせも気にならなくなった。
ニノが俺のスマホが鳴る度に取り上げて、その痕跡を次々に消していくからだ。
ニノと居ると、安心できた。
擦り切れた心が、少しずつ元に戻るようだった。
ある日、いつものように家に戻ると、家のドアの前にいるニノがうずくまっていた。
暑さで熱中症になりかかっていた。
家に入れて介抱して事なきを得たけど、それでもニノは微笑んで俺を支えてくれた。
そんな青い顔してるのに…俺の心配なんかするなよ…
その日は泊まってもらって、次の日はニノの現場まで自家用車で送っていった。
「いいのに…もう体調なら大丈夫だから…」
「ううん。送らせてよ。感謝、してる」
照れくさそうに笑うと、ニノは窓を少し開けて外を眺めた。
現場について、降り際ニノの手を握った。
「なに?」
不思議そうに俺の顔を見るニノの手に、俺は自宅の鍵を落とした。
その日から、ニノは俺の家に住むようになった。