第11章 グレイscene4
「とりあえず、乾杯」
「かんぱい…」
元気ないなあ…そう思いながらもジョッキを口元に運んだ。
「翔ちゃん」
口の中に冷たいビールが流れ込んできた瞬間、智くんが話しかけてきた。
「セックスのやり方教えてっ!」
「ぶふぉおおおおおっ」
おもいっきり、口の中のビールをテーブルにぶちまけた。
「なっ…なっ…何いってんの!?」
嘘だろ。35にもなって童貞とか言わないよな!?
つか、女いっぱい連れ込んでただろ!?
若いころなんて、マネージャーの目を盗んでツアー先のホテルにだって連れ込んでたじゃねえか!
智くんはおしぼりでこぼれたビールを拭きながら、真っ赤になって下を向いている。
「や、やめてよ!からかってんの?」
「ちがうっ…ちがうの…」
「じゃ、なに言ってんだよ…」
意を決したように、智くんは顔を上げた。
「俺…男を好きになった…」
「えっ…」
ということは…あれか…男同士のセックスを教えろってこと…?
「いや、智くん…さすがの俺でもそれは知らない…」
「俺…こんなこと初めてでどうしていいかわからないんだ…」
いつもは寡黙な智くんが、饒舌に語り出す。
どれだけその男がかわいいか、どれだけその男が賢いか。
今まで気づかなかったけど、こんなに恋焦がれているんだ…
こんな智くん、見たことがなかった。
「わかった…」
溜息をつくと、その質問に答えることを約束した。
次の休み、またこの居酒屋に集合することにした。