第11章 グレイscene4
「違うよ…ただね…何かしたかったんだよ。俺、智のために何もできないから…」
鼻の奥がツンとして、泣きそうになる。
でも、堪えないと…伝えないと…
「俺は…智みたいに演技ができるわけじゃないから…智の苦しみはわからない。だから…せめて智が快適に過ごせるように気を配るしかできないんだよ…」
「そんなこと…」
「凄いよ…こんな役、一生かかったって俺にはできない。それをさ…智は軽々と乗り越えるんだ…だから…役に…」
言葉が続かなくなって、抱きしめる腕に更に力を入れる。
「ごめん…誤解させるようなことして…本当に潤とはなにもないから…」
頑なに、智くんは俺に背を向けたままで…
「一緒に居たくないなら、俺が出て行くから…ここは智の家なんだから…」
するりと智くんから腕を外して身体を離した。
背中を向けてリビングの出口に向かう瞬間、背中に温かい感触。
「翔っ…行っちゃやだっ…」
智くんの腕が俺を抱きしめていた。
「ごめんっ…誤解してっ…ごめんねっ…」
「智…」
そっと抱きしめる腕に手を添えた。
「智…ごめん…」
「謝らないで…ごめん…俺…」
「ううん…いいんだよ…俺が何も言わなかったから…」