第9章 退紅(あらそめ)scene3
やっとそこで智くんは現実に帰ってくることができた。
もう俺と離れたくない…離したくない…
全部話したら、俺は離れていってしまうかもしれない。
でも、もしかしたら離れないかもしれない。
俺はコーヒーを飲み干した。
智くんは俺がすべて許してくれてると悟った。
だから俺を抱いた。
抱いて、忘れようとしたんだ…
「だけど…なんで翔くんは俺を許す気になったのか、わからない」
智くんの目からまた一粒、涙が零れた。
「…それだけの事を…俺はしたと思うから…」
ファンを裏切り、事務所を裏切り、メンバーを裏切り…
どれだけの迷惑が掛かるかわかっているのに、あえて彼女を差すようなことをした。
それも全部、俺のために…
俺との生活を守るために…
あなたは…そういう人だ
俺の知らないところで
知らないうちに傷ついて
それなのに俺のこと守って
俺が気づかないよう…
自分が血まみれになっても
それでも立ち上がって叩き潰す
俺の障害になるものを…
すべて…
「…智くんが俺から離れていくのが許せない。だけど、それ以外のことは…」
智くんはじっと俺の顔を見た。
「大したことじゃないんだ…」