第9章 退紅(あらそめ)scene3
「怖かったんだ…」
ぎゅっと背中に置いた手を握った。
「智くんが…俺よりも女を選んだらって…ずっと怖かったんだ…だから、あの時智くんから逃げたんだ…話をすることを避けたんだ」
ごめん、ごめん…
智くんの背中を擦って、なんとか涙を堪える。
「恐れていたことが現実になった…だから逃げに逃げて…智くんは逃げないで家で待っててくれたのにね…」
「ちがう…俺だって逃げたよ…」
「智くん…」
「ニノが…相葉ちゃんが、松潤が俺のそばに居てくれて…迷惑かけてるってわかってたけど、もしも翔くんだったら…そう思ったら、皆のことが翔くんに見えて…」
少し身体を起こして、智くんは手のひらを見つめた。
「正気と…なんだろ、もう頭おかしくなってたのかな…現実じゃないとこを行ったり来たりしてて…さっき…翔くんが帰ってきた時、一回正気に戻ったんだ」
やっと智くんは顔をあげて俺を見た。
「そのとき…賭けたんだ…翔くんがコーヒーを飲んでくれるか」
でもその後また、現実じゃないところに入り込んで…
俺がいるのをわかっているのに、翔くんは居ないって思い込んで…
「でも翔くんは飲んでくれた…美味しいねって…言ってくれて…」