第9章 退紅(あらそめ)scene3
こんな関係、もうやめよう?
”……じゃあ私と寝て?”
なんでそんなことしなきゃいけないんだ
”リハビリの仕上げと…”
…なに…
”櫻井さん……”
彼女は薄っすらと笑った。
一回だけ…そういう約束で智くんは彼女を抱いた。
でも彼女の要求は続いた。
金も渡した。
関係を拒むと俺の名前をただ呟く。
彼女は自分の叔父と同じ所に堕ちた。
智くんは決心した。
もう…俺の恩返しは終わった
「…あの日、あそこに居るって垂れ込んだの…俺だよ」
「え…」
「彼女を俺から引き剥がすため、そして二度と芸能界に復帰させないため…翔くんに近寄らせないために…仕方なかったんだ」
「智くん…」
「彼女には証拠がないから、あの事件のことは公表できない。それに…共犯だと疑われるから、言い出せないと思う」
智くんはバスローブの裾をぎゅっと握った。
「ごめんね…翔くんを…傷つけるのわかってたんだ…」
ぎゅっと握った拳が震えてきた。
「もう…二度と傷つけないって…思ってたのに…」
大粒の涙が拳の上に落ちてきた。
「翔くん…なんで…」
「ん…?」
「何で俺を許してくれるの…?」
だんだん、智くんの身体が丸まっていく。
手で顔を覆うと、智くんは自分の膝に突っ伏した。
俺は、そっと背中に手を置いた。