第9章 退紅(あらそめ)scene3
食べるに困った彼女は…
あんなイロモノみたいな場所で働いていたのだ。
智くんは純粋に同情した。
タレントを続けられなかった理由…
濡れ場が演じられない。
演じられてもギリギリの線で…
大根、棒読みと罵られて、叩かれて…
女優が濡れ場を演じられないのは致命的なことだ。
じゃあバラエティにと駆りだされても、男性と絡めなくて次第に仕事はなくなっていった。
最初は大手の事務所に居た。
だが、居づらくなって弱小に移った。
でも弱小のほうが、そういう需要は高い。
ついに彼女はその事務所もやめることになった。
レイプされたことの後遺症…
彼女は完全に男性不信に陥っていた。
智くんには…その気持ちが痛いほどわかった。
同じ経験をしているから―――
あの時協力してくれた恩を返そうと思った。
だって、彼女はあいつを殺すことを知らなかったから。
証拠を取り戻したら、地方に逃げてほとぼりを冷ますつもりだった。
あいつは死んだよと告げた智くんに、彼女は怯えていた。
その顔は、今でも忘れられない。
だから…罪滅ぼしをしようと思った。
また、芸能界に復帰できるように、普通に男性に接することができるようリハビリに協力しようと思った。
そんな智くんの優しさに…
彼女は次第に錯覚をしていったんだ…
”この人、私の事が好きなんだ”
智くんが気づいた時には、俺との生活に支障が出るくらい、彼女は智くんにのめり込んでいた。