第9章 退紅(あらそめ)scene3
果てた俺を、智くんは上から見下ろしている。
「ありがとう…翔…」
ぽたり、また雫が俺の顔に落ちてきた。
「もう…こんなことしないから…」
「なにがあったの?」
智くんは目を逸らした。
「…あの子を抱いたんだね…?」
俺に覆いかぶさったまま、こくんと一つ頷いた。
「ごめん…」
だから…俺を抱いて、上書きしたんだ…
「いいよ…大丈夫だから…」
そう言ってやっと自由に動くようになった手で、智くんを引き寄せて抱きしめた。
「…あのコーヒー、何入れたの…?」
「それは言えない」
「言えないもの飲ませたの?」
「医療関係者からもらったから…」
「…それ、薬事法違反じゃねえの?」
「しらない…」
「報道するぞ…」
「やめて…」
腕を解いて智くんの顔を見た。
「ごめん…ちゃんとあの時話せば良かったんだよね…」
「俺も…話に行ったのに逃げてごめん…」
お互いの顔を手で包み込んだ。
「もう離れないって…言ったのに…ごめん…」
「もう少しで翔くんを切り刻んで食べるところだった」
「…食べたじゃん…」
そう言うと、智くんは真っ赤になった。
「ご、ごめん…」
「俺のバージン奪ったんだから、一生養ってよ?」
「翔くんのほうがお給料貰ってるじゃん…」