第9章 退紅(あらそめ)scene3
俺は顔を上げた。
ラグの上に放心したように座る智くんを見た。
「智くん…好きだよ…」
自己満足でもいい。
俺の気持ち…伝えなきゃ…
「智くんが俺を好きじゃなくなっても…ずっと好きだ」
カップを置いて、智くんに近寄る。
放心してる頬に触れる。
「ごめん…智くんを思い続けることだけは許して欲しい」
一生…忘れることなんてできないだろう。
あんなに愛して…あんなに愛された…
もう二度とあんなことないだろうから。
ポケットから部屋の鍵を取り出した。
さっき潤から返してもらった鍵。
智くんの手を取って握らせた。
「この鍵を智くんが貰ってくれた日…俺、すごく幸せだった…」
ゆっくりと智くんは俺の顔を見た。
「…もしも…智くんがまだ俺のこと好きなら…戻ってきて欲しい」
ぎゅっと鍵を握る手を上から包んだ。
「だから、この鍵…持っていてくれないか」
鍵を握った手が震えだした。
「…翔くん…?」
「ん…?」
「翔くんなの…?」
俺の涙に濡れた頬を、智くんの手が包んだ。
「帰って…きてくれたの?」
「うん…ごめんね…逃げて…」
「…ごめん…ごめんね…こんなに痩せて…」
「智くん…」