第9章 退紅(あらそめ)scene3
「…お前らには言えないことがたくさんあるんだ…だから、二人で話させてくれ…」
俺は頭を深々と下げた。
「迷惑かけて…すまなかった…」
「翔ちゃん…顔を上げてよ」
雅紀が優しく俺の肩に手を置いた。
「わかってるよ。迷惑だなんて思ってないし…」
「そうですよ。そりゃね、こんなことくらいでって思わないでもないですがね…でも、なんかあるんでしょ?」
「ちゃんと責めないで話せるよね?」
潤の問いに俺は頷いた。
「俺達は、二人に元通りに戻って欲しい」
「それは…智くんが決めることだから…」
「なに言ってんだよ…翔くんって鈍いんだね」
「はあ?」
「もういいや、ほっとこうぜ。行こ行こ」
はあいとニノと雅紀も同意する。
「ちょ、待てよ」
「はいはい。じゃあね。しっかりね」
雅紀が俺を押し戻して、リビングから出て行った。
「潤…鍵返せ…」
ぽつんと言った一言が聞こえたのかどうか。
潤がリビングのドアを開けて、鍵を俺に渡してきた。
「では」
真面目な顔をして潤はドアを閉めた。
ため息を付きながら振り返ると、智くんが俺を見ていた。
なにも、ない。
なんの感情もない顔で俺を見ていた。