第9章 退紅(あらそめ)scene3
東京に戻ったら、俺は病院に連れて行かれた。
散々また、宮城でやったのと同じ検査をされた。
でも、どこにも異常は見つからなかった。
マネージャーに家まで送り届けてもらう。
「あの…櫻井さん…」
「なに?」
「部屋、わかりますか?」
「1202号室だろ?わかってるよ」
「え…それはわかるんですか?」
「だからさ、俺、なんの記憶なくしてるわけ?」
「いえ…その…」
「言えないようなことなの?」
「いえ…」
そのまま黙りこんでしまったから、俺は車を降りた。
「じゃ、明日の迎え時間通りでいいんだね?」
「はい…」
「じゃあね。お疲れ。悪かったね病院付きあわせて」
「いいえ…ゆっくり休んでください」
「ああ。ありがと」
そのまま真っすぐマンションのエントランスに入る。
郵便物を確認すると、廊下を真っすぐ歩いて一階の駐輪場へ出る出口を開けた。
そのまま、俺はマンションを後にした。
もう、戻れなかった。
『翔さん…どこに居るのよ…』
疲れたようなニノの声が留守電に入っていた。
『俺、話し聞くって言ったよね…だから、連絡ちょうだい?』
ごめん…ニノ、ありがとう。
でも俺は今…もう誰ともしゃべりたくないんだ…
自分の声ですら、聞きたくない