第9章 退紅(あらそめ)scene3
翌日、朝から病院中をたらい回しにされて検査された。
異常なし。
熱はまだ残ってたから、点滴をしてスタジアムに向かった。
残ってたリハをこなして楽屋に戻ったら、もうギリギリの時間になってた。
急いでメイクして衣装に着替えた。
智くんが幽霊みたいに立ってたから、背中を叩いた。
「さ、行くよ!なんかあったらフォローするから!」
こくりと頷いた顔は、なにも表情がなかった。
急いで会見をする場所に向かう。
緊迫した空気が漂ってた。
マネージャー達が俺たちを取り囲んで、会見のギリギリまで記者たちを遠ざけていた。
「あー…とりあえず、大野は余計なことは喋るなよ」
前日打ち合わせたとおりのことを智くんは喋るだけでよかった。
後の質問は、司会の人がシャットアウトしてくれる予定だ。
「はい…」
消え入りそうな声で、智くんは返事をした。
ニノや雅紀が智くんを支えてる。
まっすぐ立っていられないほど、緊張してるんだ…
会見のスタート時間が迫る。
背筋に緊張が走る。
智くんも顔がしっかりしてきた。
俺たちは俺達のやるべきことをやるしかないんだ。
「智くん、頑張ろうね」
「うん…」
微笑んだ顔は、酷く透明だった。