第6章 ノクターン
「ニノ…」
大野さんは起き上がって俺を起こした。
「勘違いだよ…?だから、気にするな…」
「なんで…そんな嘘つくの…?」
「嘘じゃないから」
そのまま沈黙が流れた。
夜の帳がこの部屋を包んでる。
カーテンの隙間から漏れ出る淡い街の光。
薄っすらと大野さんの姿を形作った。
「お前は…今は何も考えるな…」
そっと抱き寄せられた。
それはでも、その体温は俺には現実で。
ますます俺の罪がのしかかってくる。
あの新宿のルノアールでみた微笑み…
きっと今あなたはあんな微笑みを浮かべている。
ノクターンが聞こえる…
「俺に…優しくしないで…」
「ニノ…」
「優しくしないで…優しくしないで…」
「どうした…お前…」
「俺はそんな人間じゃないっ…」
ベッドから飛び降りると、力が入らずに床に崩れ落ちる。
「ニノっ…」
「近寄るなっ…」
這いつくばってドアに手を掛けると廊下に出た。
帰らなきゃ…家に…
現実に…こことはちがう現実に戻らなきゃ…
「どこいくんだよ!」
「うちに…帰らなきゃ…」
「だめだって…なにもないだろ?」
「俺のうちに帰るんだ…」
「ニノっ…!」