第6章 ノクターン
引きずられるように大野さんの家に連れて行かれた。
初めて入る大野さんの家。
大野さんの匂いがした。
「大野さん…」
「今日は、風呂入って寝よ?な?」
まだ目の前にはスクリーンがあって。
出来の悪い映画…
急に彼女の死に顔が浮かんだ。
吐き気を催して、口を押さえた。
「ニノ!?」
大野さんが俺の腕を引いて、トイレに連れて行く。
出しても出しても吐き気は収まらない。
大野さんが無理やり水を飲ませてくる。
気持ち悪い…
「ニノ、飲め!飲むんだ!」
そんなこと言っても、もう飲めない…
足にも手にも力が入らない。
大野さんは俺を後ろから抱えると、背中をさすった。
「出せるだけ出しちまえ…」
飲んだ水をすぐにまた戻して。
涙が出る。
よだれが糸を引いて便器に吸い込まれていく。
苦しい…
なんでこんな出来の悪い映画なんか見なきゃいけないんだ。
なのに大野さんが触れているところの熱だけ、リアルで。
こんなにも現実で。
意識が浮遊していく。
足元がふっと浮いた。
「ニノ!」
大野さんの声が聞こえたけど、返事ができなかった。
そのままトイレの床が近づいてきて俺の身体に衝撃が走った。