第6章 ノクターン
それから後、何をしていたのか思い出せない。
女は面会には来なかった。
マネージャーも、俺になにも話してこなかった。
大野さんも俺には何も言わない。
帰りの飛行機で隣に座った大野さんは、俺をみてにっこりわらうと、寝てしまって…
一体、あの女が何をしに来たのか全然わからなかった。
日本に帰ったら翔さんから連絡があって。
大野さんに処分が出たと告げられた。
女を、妊娠させたと。
携帯を持ってる手が震えた。
違う…違う…あれは…
あれは俺の子供だ。
大野さんはちゃんと避妊してた。
俺が…
でも言えなかった。
喉が潰れたように俺は声を出せなかった。
急いで大野さんに連絡したけど、電話には出てくれなかった。
その後も、暫く仕事では一緒にならなくて、ずっと大野さんには会えなかった。
じりじりと心が擦り切れていく。
大野さんが…俺の罪を被ってくれた。
そうとしか思えなかった。
やっと会えた時…
大野さんは俺の目をまっすぐ見て、そして笑った。
何事もなかったかのように。
俺はその顔をみたら、なにも言えなくなって。
ただ下を向いて泣いた。
新宿のルノアール。
そこで流れていたのは、ショパンのノクターンだった。