第3章 チェリー・ポップ
かずは…とても傷ついていた。
皆、気づいてた。
だけど、誰もどうすることもできなかった。
真剣に結婚まで考えていた彼女と別れたのは、ひと月前だった。
アカデミー主演男優賞を受賞した、その勢いで事務所に交渉しているところだったんだ。
彼女とのことを…
平気だよって笑ってるその顔は、とても儚くて。
はっきりとは言わなくてもわかるくらい落ち込んでて。
それにアカデミー賞を受賞したことで、バッシングも起こっていた。
天狗になってる…スピーチが前代未聞だ…
日に日に食も細くなっていく。
言動も荒れていく。
映画のキャンペーンが終わったら、他の仕事が入れられないくらい、かずの状態は最悪だった。
そんな時に…こんなことが起きるなんて…
「い…行かないで…いかないでぇ…」
左手を取ったまま、動けない。
こんなに自分の気持ちをさらけ出すかずを初めてみた。
「ここに…居るから…」
泣きじゃくるかずの腕を引き寄せて抱きしめた。
「大丈夫だから…」
俺は…どこにもいかないよ…?
お前とずっと一緒だよ…?
そう言いたいけど、口下手な俺は上手に気持ちを伝えることが出来ない。
どうしたら…伝わるんだろう…