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〈刀剣乱舞〉もしも、明日………

第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい


「ッハ!」
髭切は亜種に斬りかかる。
だが、空中であっさりとそれを避けられ、いよいよ手はつきそうだった。
「やっぱり飛んでしまったのが厄介だね。」
声こそ普段と変わらないが、髭切の額には汗がにじんでいた。
「どうする?羽を切り落とす?」
蛍丸の問いに髭切は首を傾けて考えた。
背後に視線をやれば、今剣は俯いたまま刀を構える事もせず、ただただそこに居るだけだった。
それを叱咤する者もいないし、文句を言うものもいない。彼が失ったものの大きさは解っている。
崖から落ちた岩融と、彼岸花。あの高さだ。まず、助かることはないだろう。
髭切は一つ息をはいて、決心した。

「引こう。これ以上は無理だ」

いざ引くとして、亜種の動きは厄介であった。
バサバサ羽を動かす奴は、此方に威嚇をしており誰かが一歩でも動けば突っ込んでくるだろう。
そういう意味では、今剣が発狂して暴れださないだけ良いのかもしれない。
(なんて、考えてる場合じゃないよ)
自分に向かって呟いて、髭切は刀を振った。
(やるしかないか)
囮なんて、千年も刀をして初めての事だ。
髭切が蛍丸に話を遠そうとした瞬間ーーーコツン、と小さな音が響いた。
見ると、小石がコロコロと転がっている。
「………?何だろう」
「さぁ?」
見ていると、また一つ。小石が飛んできて、今度はそれが亜種に当たる。
亜種が小石の飛んできた方を見た。すると、更に一つ、二つ、飛んできて亜種に当たる。
次に、草むらが揺れた。
そして、小さな影が二つ。亜種の前に躍り出る。
「!あ………」
髭切が言葉をかける前に、亜種がその小さな影へと突っ込んだ。
見ている此方の心臓が止まりそうな光景。次に予想できるのは、その小さな影が無惨にも倒れるところ。
髭切は走り出そうとするが、小さな影はすいと亜種を避けた。
そして、そのまま亜種をギリギリまで引き付けてから草むらを駆けおりていった。
亜種はそれを上空から追いかける。
森に入ってしまえば突っ込まれる事は無いだろうが、何をしたいのだろう。あの短刀達は。
(……………………………………う~ん。いや、もしかして)
わざと亜種を呼びに来た?何のために。
解らないが、もしかすると、まだ彼女が………
「何だったの、今の」
蛍丸の呟きは空気にとけていった。
呆然と立ち尽くす四人は、ただ遠ざかっていく亜種の羽音を聞いていた。
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