第8章 華落 3
大ぶりの花器に枝を挿していく。
「潤、次はその枝」
「はい」
先生が手際よく、完成させていく。
これが全部咲いたら、とてもとても綺麗だろう。
「これで、よし」
先生が立ちあがった。
「暫く温かい窓際においておきなさい」
「はい」
カーテンのない出窓に、桜を飾った。
先生と僕はいつまでもそれを眺めた。
心の中に咲いている桜を、ずっと。
僕たちはまだ、心の中に咲いている桜のように、実体がないのかもしれない。
これから…
これから二人で作っていけばいい…
先生が僕のために過去を捨て去ってくれたように。
僕も先生の過去を捨てる。
ありのままの先生を愛する。
それだけが僕が僕である証明。
僕達がふたりで生きていく道。
「きっと…美しい花が咲くよ…潤」
「はい…先生…」
春は…美しい者達の上にくる。
【終わり】