第68章 モノの子scene11
青い目が、悲しく瞬いた。
「モノになったなら…和とずっと一緒にいられるのにな…」
それは、甘い響きで…
ずっと大野と一緒にいられる…
幽鬼になった大野と、ずっと一緒に暮らせる…
この三月、ずっと大野と暮らした日々を思い出していた。
あんな楽しい日々が…また…
「うっ…ぐう…」
突然、大野が苦しみだした。
身体を抱えるようにして、転がり回る。
「大野!?大野!?」
「あっ…うぐ…近寄るなっ…」
「どうしたの!?」
「だめだ…お前を食ってしまいたい…」
額に汗をかきながら、大野が蹲った。
「近寄るなっ…」
大野が叫んだ瞬間、真っ黒の霧が辺りを覆った。
「大野ぉっ…」
霧を掻き分けて、大野の身体にすがりつく。
「いいのか…モノの子…」
聞いたこともない声…
「喰ってしまうぞ…」
底冷えする声。
「誰だ…お前…」
「幽鬼だよ…」
霧が晴れて、大野の姿が鮮明に見えた。
そこに居たのは、大野じゃなかった。
ゆらりと立ち上がると、僕の顎に指を掛けた。
ぐいっと引き上げると、ニタリと笑った。
「うまそうだ…」
幽鬼は笑うと、舌で唇をベロリと舐めた。
【つづく】