第8章 華落 3
桜の季節がやってきた。
この時期、花が一斉に溢れる。
華道の世界も春は活気づく。
春の花展に向けて、生徒さんたちにも熱が入る。
今は、一年中いろんな花が流通しているけど、やっぱり春は花の種類が増えて…
僕は素朴な野草が好きで、道端にぽつんと咲いている野草を摘んで帰ることもある。
そんな僕をみて、先生は微笑んでいる。
最近、僕と先生は一緒に暮らすようになった。
あれからやっぱり、僕と先生の距離は変わらないけど…
僕が言った言葉を、先生は受け止めてくれたように思う。
僕は…それを信じようと思った。
それしか、できない。
先生が闇をさらけ出せるほど、僕が信じていくしかない。
僕が先生に、ついていけばいい。
それは、僕にしかできないことだと思った。
僕にだけ、できることなんだ…
先生と…ひとつになる
「潤…鋏がない」
「え?」
教室が終わって、先生のお道具を片付けている時だった。
「花鋏、一個足りない…」
「あ、探しますね…」
生徒さんの席を探してみたけど、どこにもなくて。
先生のお道具を確認したら、一番細い花鋏がなくなっていた。