第65章 モノの子scene8
「大野…」
「ん?」
「食べたい」
「え?」
殺してしまおう。
今日こそ…
大野の絹の着物をそっと脱がせた。
腕まではだけさせると、首筋にそっと噛み付いた。
「大野…」
「なんだ…?和…」
大野がくすぐったそうな声で答える。
「とっても美味しかった」
白い鬼火が見えた。
気がついたら、翔鬼の身体を抱えて空を舞っていた。
大野の屋敷から火が出ている。
燃えている。
僕の身体は修羅になっていた。
こんなに細い足なのに。
こんなに細い腕なのに。
僕の身体には力が漲っていた。
「翔鬼…帰ろう…」
気を失っている翔鬼の身体を強く抱いた。
「私達の棲家へ…帰ろう…?」
次から次へと溢れてくる涙が、なんなのかはわからなかった。
【つづく】