第63章 モノの子scene6
「俺はもっと出世する」
ぼくを腕に抱きながら、大野が呟く。
「鬼を捕まえてる」
一瞬、息が詰まった。
「そいつをお上に突き出せば、また褒美がたんと貰える」
翔鬼…!
きっと翔鬼だ…
「どうした…?」
大野がぼくの顔を覗き込む。
「鬼が怖いのか…?」
首を振ると、また大野は微笑んだ。
「大丈夫。俺がいるから…守ってやる…」
翔鬼を救い出さなきゃ…
早く、大野を食べなきゃ…
そう思っているのに、大野の笑顔から目が離せない。
手のぬくもりを突き放すことができない。
「大野…」
「和…」
そっと、胸に抱いてくれるこの腕を、振りほどくことができなかった。
潤鬼…
潤鬼…教えて…
人間の身体は、なんでこんなに温かいの…?
「ずっと一緒にいような…和」
そう微笑む声を、ずっと聞きたいと思った。
「大野…?」
顔を見上げると、大野は泣いていて。
「なんで泣いてるの…?」
「お前を抱いてると、幸せだからだ…」
「幸せ…?」
「お前のことが、好きなんだろうな…」
「好き…?」
胸が熱くなった。
こみ上げてくる。
大野を食べたい。
食いちぎって、味わいたい。
これが…好きってこと…?
雅鬼…教えてよ…
ぼくは大野を好きになってしまったの…?
なんで…
翔鬼…
早く、抱いて
【つづく】