第62章 モノの子scene5
その日のうちに、翔鬼がかえってくると信じてた。
でも、帰ってこなくて。
朝日を見ながら不安で堪らなかった。
山を降りることは翔鬼に止められていたから、探しにでかけることもできずに数日が過ぎた。
子鬼たちもしくしく泣く。
翔鬼のいない昼間は、いつ人間がくるかわからず不安にもなる。
息を潜めながら、夜が来るのを待つ。
それでも、何回も翔鬼のいない夜を迎えると、夜目のきかない僕にはそれも不安で。
夜烏の鳴き声にすら怯える。
ある夕暮れ、堪らなくなって洞窟を飛び出した。
都に向かって休むことなく走り続けた。
不安で不安で。
早く翔鬼の胸に抱かれたくて。
安心したくて。
もう大丈夫だよって言って欲しくて。
あんなに一人で頑張っていこうと思ったのに、頼れる腕ができた途端、またぼくは弱虫に逆戻りして。
もう、甘えないから…
だから翔鬼、帰ってきて。
都につくと、なんのあてもなく彷徨った。
夕闇が濃くなり、人々は家路を急ぐ。
大きな橋が見えてきて、差し掛かる頃にはもう人通りも途絶えて。
暗闇がどんどん侵食してくるのを眺めながら、橋を歩いた。
「お前」
不意に呼ばれて立ち止まった。
振り返ると、鈍色の着物をまとった男が立っていた。
【つづく】