第54章 ラズベリーscene4.5 その6
和也の顔は蒼白だった。
けど、何かを固く決めた表情で。
きっと、何かを考えてる。
俺には…
わかってたんだ…
和也が、必死に雅紀を手に入れようとしてたことが。
わからないわけない。
ずっと一緒に居るんだ。
あの日…
ホテルから出てくる和也を見た。
俺は、撮影が長引いて朝に帰るところだった。
厳しい顔で、車を運転してた。
何があったのか、語らない。
でも和也はその日から荒れていた。
夜、飲みに行く回数が増えた。
たまに、和也のじゃない香水の匂いを漂わせて帰ってくることもあった。
何が起こってるのか、俺にはわからなかった。
けど、ふたりになると和也はいつもの和也で。
俺に対する愛情はどこも変わらなくて。
むしろ前よりも愛されてると感じるくらい…
俺は見守ろうと思った。
和也が何をしたいのか。
何を苦しんでいるのか。
でも少し、不安になった。
そんなとき、雅紀が俺の心にするっと入ってきた。
雅紀も不安定で。
俺を求めてた。
するっと入ってきた雅紀が、だんだん俺の心の中を占領しても、不思議と和也を愛する心はかわらなかった。
和也は俺にとって特別で。
和也のための心の容量は、別にあるみたいだった。
そして、雅紀も。
俺達の腕に飛び込んできた時から、雅紀の容量も別にできあがっていった。