第7章 華落 2
「先生を苦しめて居るものは…なんですか…?」
潤の言葉が、脳裏に甦る。
あの純粋で真っ直ぐな瞳。
俺を救おうと必死で…
バカだな…アイツ…
そんなに俺のこと、好きなのか?
こんな俺なのに…こんな…
外を見ると、雨が降り出していた。
喫茶店の窓から眺める人々が、逃げ惑うように駆けていく。
「ふ…」
知らず知らず笑いがこみ上げる。
あの日も、こんな雨だった。
煙るような霧雨が降っていた。
咥えていたタバコを灰皿に押し付けると、俺は立ちあがった。
何年前だろうか。
6月だというのに、蒸し暑い日だった。
「にーのみーやくん!」
後ろから傘を掴まれた。
同時に背中を押されて、突き飛ばされた。
濡れた道路に、倒れこむ。
「あっ…ごめんねー!見えなかった!」
ゲラゲラと笑う、同級生二人。
「そう…傘、返してよ」
いつものこと。
俺が反応しないから、最近は絡んでくることが少なくなっていたのに…
面倒だな…
傘に手をかけようとしたら、もうひとりの同級生に渡し、ニヤニヤしてる。
「…急ぐんだよ…稽古があるんだから」
「稽古ってあれだろ?花だろ?」
「女みたいだな。お前」
「しょうがないだろ…家がそういう家なんだから…」