第17章 海鳴り
海鳥の鳴く声がする。
海辺の民宿に俺は居た。
死のうと思ってた。
社会人になって15年目。
会社で大きなミスを犯した。
それはほんの些細な事だった。
桁が一個、ずれていた。
営業にとって、命の見積。
エクセルの操作を誤ったんだと思う。
最終的なチェックも、見落として居たんだと思う。
大きな入札の案件だった。
その一桁のミスのせいで、会社は入札停止処分に追い込まれた。
その案件は大きな金が動くもので、会社の半期の売上に大きく影響した。
実はほとんど決まっていたようなものだった。
法令違反なのは、重々承知。
だが、どこの会社でもやってることで。
なのに、俺が見積の桁を一個間違えたせいで、全てが水泡に帰した。
入札停止処分を受けたおかげで、今期はそれを取り返すこともできなくなった。
上司から叱責を受け、俺は部署を移動することになった。
今までの実績を考慮して、クビにはならなかった。
しかし、移った部署は昼行灯みたいなのが集まってる部署で…
仕事という仕事はない。
それに、俺の頭は思考停止状態で、ちっとも働かないし。
日がな一日、ぼけっと窓際に座ってビルの外を眺めてる。
なんの意味があるんだ。
なんで俺はここに居るんだ。
なんで…
俺は生きてるんだ。