第13章 悪徳の花 2
そんなことで喜ぶなんて…
「その二宮くんが、突然清掃員としてウチに来たのは、驚いたよ…」
そっと俺を抱きしめる。
「運命だと思ったんだ…」
だからあの日、勇気を振り絞って声を掛けたのだと。
そう語る翔の腕は、徐々に力が入っていって。
「少しでも、力になりたい。だから、僕に隠し事しないで…ね?」
その時に、親の借金のことを語った。
あれから一年。
いよいよ、俺は自由になれる。
「室長、なんかいいことあったんですか?」
部下のお尻のムッチリした女が、媚を売るように聞いてくる。
「ああ…まあな…」
「やだ、教えてくださいよ」
尻を振りながら近寄ってくる。
いつもなら、触りたいと思うところだが、今日はなんだかそんな気分にならない。
「邪魔するな、あっちいってろ」
軽く手を振ると、ぷりぷりしながら戻っていった。
「そんな…借金払ってもらうなんてできないよ…」
内心でほくそ笑みながら、苦しい顔を作る。
「和也…お願い…受け取って欲しい」
「だめだよ…翔」
「僕は…和也の身体が心配なんだ…ただ、それだけなんだよ…?」
俺の頬を、温かい翔の手が包んだ。
「お願い…愛してる…」
漆黒の瞳に、吸い込まれそうだった。