第12章 悪徳の花
ガシャン…
用具を仕舞うロッカーを乱暴に閉める。
「おい、二宮。そんな乱暴にするな」
年長の作業員が、声を掛けてくる。
「用具は大事に使わないと、怒られるのは俺たちなんだからな…」
「すんません…」
あからさまに不貞腐れた表情を作って、謝っておく。
こうしておけば、こいつらはこれ以上何も言ってこない。
「ま、気をつけろよな…」
長靴の音を響かせて、作業員は去っていく。
地下の寒い作業所。
ここには病院中のゴミが集まってくる。
一日の終りに床掃除をして、これで仕事は上がりだ。
作業用のスニーカーは既に、真っ黒に汚れている。
この仕事を始めて一ヶ月。
好きで始めた仕事じゃない。
勤めていたIT企業が、突然倒産したのだ。
今時、プログラマーなんて巷に溢れるほど居る。
3ヶ月、就職活動を頑張ったけど、思うような企業に採用してもらえなかった。
貯金もそんなにしていなかったから、あっという間に困窮した。
勤務年数が少なかったから、失業保険もそんなに長くは出ない。
焦って応募したのが、この病院の清掃員だった。
勤務時間が短い割に、時給が凄く良かったのだ。
これなら就職活動を続けられると思った。
だから働き始めたのに…