第11章 玲瓏
帽子の行方を目で追っていた和と目があった。
虚ろな目は、俺を認めると大きく見開かれた。
みるみる潤んでいく瞳…
そして顔を手で覆った。
上を向くと、声にならない叫びを上げた。
” み な い で ”
その響きが、痛い。
俺はそっと背を向けた。
静かに、その場を立ち去った。
和…?
ごめんな…
苦しかったな…
ごめん…
次の日の朝、また和の家を訪ねた。
そっと玄関を叩くと、すぐに和が出てきた。
「大野さん…」
寝もやらず待っていたのか…
目の下に隈をこさえていた。
「和…昨日はごめんな…」
「いいえ…いいえ…いいんです…」
泣きながら俺の手を取った。
その手を涙に濡れる頬に付けた。
「よかった…」
涙で手のひらが濡れる。
「もう…来てもらえないかと思った…」
「そんなわけ無いだろ…」
「大野さん…」
「智…」
「俺の名前…智…」
「あ…智…?」
「うん」
「智…さん…」
和は微笑む。
「僕も…」
「うん?」
「和也、と言います…」
「和也…」
「はい…」
「和也…愛してるよ…」