第11章 玲瓏
その人は、透き通るように白い肌を持っていた。
「名前は…?」
軍靴を脱ぎ捨てるのも忘れて、玄関口で佇む。
「二宮と云います…」
「いや…下の名前だ」
「和と呼んで下さい…」
一瞬、女なのかと思った。
でも。よく見ると筋張った手。
肩幅の広さ。
男だった。
それほど、妖艶な雰囲気を纏っている。
「そ、う…」
「あがらないんですか…?」
「あっ…ああ…上がらせてもらう…」
湿っぽい室内に足を踏み入れる。
入ってすぐ、ガラス戸の向こうに狭い畳の居間が見える。
その中央にはせんべい布団。
ここが、今日の俺の褥だ。
すでに夜が来ていて、紙の貼り付けてある窓の隙間から夜が見える。
「今、お茶入れますから…」
鉄瓶を持って、和が障子を開けて去っていく。
俺は傍らにある火鉢に手をかざした。
…柄でもない…
あんな男娼を抱くのに、緊張している。
戦地から戻ってきた俺は、男の身体なんて飽き飽きしていたはずなのに…
本当は女が抱きたかった。
でも…
「お待たせしました…」
和がお盆に湯のみを載せて現れた。
俺の傍にお盆ごと置くと、そっと勧めてきた。