第10章 コーヒー
「智…」
唇が、近づいてくる。
「…目、閉じないの?」
「お前こそ…」
「だって…もったいなくて…」
「え?」
「こんな近くで智を見られるのに…」
「バカ…」
言った勢いで、雅紀に俺からキスをした。
目を閉じて触れた唇は、昨日のように熱くて。
そっと唇を離すと、雅紀の顔を見つめた。
「好きだ…」
「うん…」
ぎゅっと雅紀が俺のTシャツを掴んだ。
「俺も…好き…」
思い返してみたら…
この10年、雅紀に女の影は見えなかった。
俺も、彼女なんか作る気にならなかった。
休みの日は、いつも傍らに雅紀が居た。
いつもいつも…
知らない間に、雅紀が居て当然になってて…
知らない間に、雅紀が居ないと落ち着かなくなって…
知らない間に、好きになってた。
「一緒だったんだな…」
「え…?」
「俺たち、一緒の気持ちだったんだな…ずっと…」
「智…」
雅紀が微笑んだ。
「これから…よろしくね…?」
「うん…」
コツンと額をくっつけた。
そのまま抱き寄せると、もう一回だけキスをした。
手を繋いで、また二人でコーヒーを飲んだ。
そのコーヒーには、雅紀の愛がたっぷり溢れるほど入っていた。
「甘いや」
「え?お砂糖、入れてないよ?」
【終わり】