第23章 Sad Monster【ドリフターズ】
「五人の娘……
私と姉御四人は全員母親が違います。
そう言えば容易に想像出来ますでしょう?
そう……正室では無い、
斉彬が好き勝手に手を付けた女達が生んだ娘なんです。
それでも自分に島津の血が流れている事は誇りでした。
私も薩摩の為に生きたいと……
島津家の息女として凛としていなければと……
だけど……斉彬はその小さな誇りすら簡単に踏み躙った。
私は……私と姉御四人は……
《何者》でも無かったのです。
将軍の御台所に為りたかった訳じゃありません。
唯、島津斉彬に……父に……
私は貴方の娘であると認めてもらいたかった。」
の想いが胸に突き刺さる。
この女も俺達と同じ《武士(さぶらい)》なのだ。
『誇り』が在れば、『誇り』が護られれば、飯など喰わなくとも生きて行ける。
それが《武士(さぶらい)》だ。
では……がこの世界へ飛ばされて来たのは……
「姉御達は諦めていたんでしょうね。
もう他家へ嫁いでいましたし。
でも私は悔しくて、悲しくて……
島津斉彬を恨んで恨んで………
………ごめんなさい。
私、土方殿に一つだけ嘘を吐きました。
私は崖から落ちたのではありません。
自分で……飛び降りたのです。」
笑みを湛えたままで語るの身体が、今にでも木っ端微塵に崩れて仕舞いそうで俺は手を伸ばす。
そしての肩に触れた瞬間……
「自分で死を選んだんですッ!
私が居なくなった事で、
父が僅かでも《娘》を想ってくれたら…って。
でもきっと、居なくなった事にすら気付いていないかもしれない。
ほら、私も土方殿と一緒なのです。
島津を恨んで恨んで、この世界に呼ばれた。
だから、私も《化物》……ッ…」
「止せッッ…」