第23章 Sad Monster【ドリフターズ】
「さて、では帰るとするかの。
その娘っ子は漂流者(ドリフ)よ。
我らが引き取るのが筋であろうぞ。」
「いンや……待て、信(ノブ)。」
「なんじゃあ?」
「おい、お前(まあ)。
とか言うたの。
お前(まあ)はどうしたいがか?」
思い掛けず、島津はに向かって大声で問うた。
「は土方と居りたいのでは無かか?」
「おいおい、お豊(トヨ)。
この娘っ子はお前の末裔だろ?
可愛くねえのかよ?」
慌てた様子の第六天魔王が諌めても、島津はどこ吹く風で続ける。
「もじょ(可愛い)かよ!
島津の血が流れておるもんが
愛くない筈が無か!」
「えー……だったらよぉ…」
「だからじゃ!
だからの意思で決めい!
島津の女子(おなご)なら、己で腹ば括れい!
お前(まあ)が己で決した事ならば、
俺(おい)は口も手も出さん!」
「あー……
ホント、お豊(トヨ)は残念な子じゃのう。
真っ直ぐ過ぎるのも困りもんだわにゃあ。」
「全くですねぇ。」
ここで那須与一も呑気にクスクスと笑った。
この状況……
唯一人殺気立っている俺が、随分と異質で滑稽で……
自然と兼定を構えているのが馬鹿馬鹿しくなる。
これも第六天魔王の手管なのか?
そうして全員がじっとを見つめる中、の背を少し押した那須与一が
「さあ、様の御好きに……」
と、柔らかく微笑む。
「私………
土方殿と……」
「来るなッッ!!!」
俺に向かって一歩足を踏み出したを恫喝すれば、はビクリと全身を強張らせた。