第23章 Sad Monster【ドリフターズ】
「何故……貴様が此処に居る?」
努めて冷静に問い掛けてみるが、俺は今直ぐにでも暴走してしまいそうだ。
お前は何故……笑っている?
まるで旧知の友に出会えて喜んでいる様な笑顔。
俺はそんなお前が…………
大嫌いだ。
腰の兼定に伸びた俺の右手を諌める如く、島津の背後から第六天魔王……
織田信長公も現れた。
「いやー……
オカマ伯の進言でにゃあ。
………此処に漂流者(ドリフ)が居るから救え…とな。」
オカマ伯……?
あのオルテ帝国の三分の一を領有する大貴族。
確か、サン・ジェルミ伯と言ったか……。
戦闘能力は皆無に等しいが、情報力は抜群だと聞いた。
それにしても俺がひっそりと囲っている者にまで気付くとは……
それで此奴らを寄越して、を漂流者(ドリフ)側に奪取しようという訳か。
「を……どうした?」
「どうもせん。
与一と共に居る。」
島津が振り返り視線を向けた先では、大木の陰で那須与一に肩を抱かれたが怯えた視線で俺と島津を見つめている。
…………俺と島津の因縁を知られて仕舞ったか?
「貴様(きさん)……
あの女子(おなご)をどうするつもりじゃった?」
探る様な声色で真っ直ぐに問われても、俺は返事が出来ない。
何故ならその答えは、俺自身にも不明だからだ。
そんな俺の様子をあっさりと汲み取ったのか……
第六天魔王が厭らしい笑みを湛えて近付いて来た。