第23章 Sad Monster【ドリフターズ】
そうして一晩を北壁で過ごし、翌朝また森の中へ戻ると………
昨日と同じ場所で、女が座ったままコクリコクリと微睡んでいた。
「何故……此処に居る?」
動揺を隠しきれず、僅かに震えた声で問う俺に気付いた女は
「良かったぁ。
またお会い出来た。」
嬉しそうに弾んだ声で言って立ち上がる。
「廃城に向かったのではないのか?
島津……
島津豊久に会いに行ったのではないのか?」
まるで嫉妬する様に問い詰める。
そんな俺をじっと見つめた女は、突然花が咲き誇るような笑顔を見せた。
「豊久公は救国の英雄ですけれど
でも、私を救ってくれたのは貴方です。
私の身体を温めてくれたのは貴方だから……」
桜色に染まる頬。
俺を信じ切っている真っ直ぐな眼差しから目を反らす事が出来ない。
「貴方の……
お名前を聞かせてくれませんか?」
一段と愛らしい声を紡ぐ女を……
を………
「土方……歳三だ。」
気が付けば俺はそっと抱き寄せていた。