第23章 Sad Monster【ドリフターズ】
「おや、土方。
此処に居るとは珍しい。」
北壁へ戻った途端、ラスプーチンに声を掛けられる。
面倒臭え奴に出会しちまったと眉を顰める俺には構わず、このロシアの怪僧は酷く愉快そうだ。
「何やら、感じた事の無い匂いをさせていますねぇ。
新しいお仲間でも見つけましたか?
それとも……漂流者(ドリフ)?」
……ったく、目敏い奴だ。
此奴と話していると五臓六腑が引っ繰り返っちまう。
「…………知らんな。」
そのまま歩き出した俺の背後から、ラスプーチンの喉を鳴らす音が延々と続いていた。
あの女は無事に廃城へ辿り着けるだろうか?
この世界には亜人(デミ)共がウヨウヨしている。
俺以外の廃棄物(エンズ)に見つかる可能性も高い。
「………生きておられんかもしれんな。」
無意識にそう呟いた自分に嘲笑が漏れる。
どうして俺がこれ程に気を揉む必要があるのか?
俺と共に居られぬ存在など気に掛けた所で何の得が有る?
あの女の存在など無かった事にして仕舞えばいいのだ。