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孤独を君の所為にする【歴史物短編集】

第23章 Sad Monster【ドリフターズ】


「お前は俺と共に居るべきではない。」

「……何故?」

「お前が会うべき男は別に居る。」

「会うべき……男?」

「ああ。
 島津斉彬の娘だと言ったな?
 では当然知っているだろう。
 島津豊久を。」

「豊久公をご存知なのですか!?」

途端に女の目は輝き出し、まるで心底惚れた相手を思い浮かべた様な表情になった。



「ああ……豊久公と言えば薩摩の誇り。
 義弘公を関ヶ原の大戦さから薩摩へ帰す為に、
 井伊の赤鬼相手に捨て奸ったお方。
 今の薩摩が在るのは豊久公のお陰だと言っても過言ではありません。」


………それ程か?

ならば早々に彼奴の隣へ行くが良い。


「その誇りとやらはこの世界に居るぞ。」

「本当ですか!?」

「此処から只管に西へ向かえ。
 二昼夜も進めば、石造りの廃城に辿り着く。
 島津豊久は其処に居る筈だ。」

「あの……
 私、一人で?」

不安さも顕わに俺を見つめる女の肩を軽く押す。

「俺がお前を導いてやる義理は無い。
 日が落ちぬうちにさっさと行け。」



そうだ。

行って仕舞え。

………廃棄物(エンズ)に堕ちた俺には《希望》など必要無いのだから。

それでもまだ動かない女を振り払う様に、俺は踵を返し北壁へと足を向けた。
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