第44章 ・スマホと大切なもの
「その、お高いので。」
「そうか。」
一瞬の沈黙の後若利は呟く。
「システムが違っては苦労しそうだが大丈夫か。」
「何とかなるとは思います。どうしてもの時はウェブ検索か文芸部の友達に聞いてみます。最悪SNSで詳しい方に聞く手もあります。」
「そうか。」
若利は重々しく頷き一旦話は終わった。
冷えるが清々しい次の日の朝、若利は部室でいちいち報告していた。律儀なのか何なのか。
「文緒がスマホに変える事になった。」
「へー、文緒ちゃんがねー。」
天童が目をグリグリさせながら言う。
「大して使わないから何たら言ってた気がするけど。」
「そろそろ具合が悪くなってきたらしい。少なくとも3年は使っていたそうだ。」
「そらヘタれてきてもおかしかねーな。」
納得するのは瀬見である。
「機種はどーすんですか。」
ついついといった様子で食いつくのは五色だ。
「ロボット印のにするらしい。」
「それ大丈夫ですか、文緒さんどっちかってえと林檎印のに馴染んでるんじゃ。」
問う川西に若利はそれなのだがと答える。
「金がかかるからと言っていた。」
「それで結局使えなかったらどうするんだか」
ここで白布が冷たく言うが程なくこいつは意外な付け足しをした。
「と普通なら言うところですがあの嫁なら問題ないでしょう。」
「お前どうした、」
山形が口を挟む。
「このところやたら若利の嫁の肩持つな。」
「持っちゃいませんよ、肯定できる所は肯定しているだけです。」
「お、おう。」
「あの嫁なら検索するか文芸部の誰かに聞くかくらいはするでしょう。」
「SNSにもつてがあるらしい。」
「じゃあ安心だな。」