第14章 檸檬
車の中は、シンとしてた。
後部座席の相葉さんは、ぴくりとも動かないで窓の外を見てる。
翔さんは穏やかにハンドルを握ってる。
俺は…相葉さんの隣に座りながら、さっきの翔さんの言葉を反芻してた。
”カズヤは…アンタだったんだ…”
それは俺のことでもあって。
一緒に住み始めた頃、カズヤの姿に自分を重ね合わせてた。
それが…俺たちが恋人になるきっかけにもなった。
もしかして、俺もカズヤだったのかもしれない。
「…ごめんな。黙ってて」
翔さんが口を開いた。
「ああ…お互い様だからさ…」
「俺自身、整理がつかなかったんだ…」
「翔さん…」
「近藤先生から、あの話を聞いてずっと考えてたんだ…
内藤を傷めつけたところで、カズヤの負った傷はなかったことにはならない…」
「うん…」
「だから…内藤の顔をみて、話をしてから考えようと思って…一人で動いて悪かった」
「いや…俺の方こそ…」
「…なに?二人共、俺に言わないでなにコソコソしてたの?」
相葉さんが、聞いたこともないような低い声を出した。
「あ…ごめんね…」
「ニノ、本当にもうああいうことはやめてくれ…心臓が止まるかと思った」
翔さんがルームミラー越しにこちらを見る。
「お前…何したんだよ」
相葉さんの声が、一層低くなった。
「え…囮になって、内藤をおびき出したの」
突然、頬に熱い衝撃が走った。
「え…」
「だから…カズヤと似てるとか聞いたのかよ…」
怒りなのか…相葉さんの手がぷるぷる震えだした。
相葉さんに殴られた…