第14章 檸檬
小さなビルに裏口から入った。
内藤を引きずるようにして、歩いて行くと階段を登ってすぐのドアを、翔さんが開けた。
「失礼します」
目で俺達にも入るように促して、翔さんはパーテーションの奥へ歩いて行く。
「おお…櫻井さん…」
「すいません、突然。今、お時間宜しいですか?」
「ああ…構いませんとも…」
随分、年を召した声の方に思える。
パーテーションの裏から覗くと、品のいいおじいちゃんが窓際の机に座っていた。
「おや…今日はまた…」
俺を見つけると、ほほ笑みかけてくれた。
ぺこっと頭を下げると、奥に進む。
ソファが二個、テーブルが一つ…
奥に事務机が二つだけの、小さな事務所。
「どうぞ…お座り下さい」
薄くなった白髪頭をペコリと下げた。
「事務の子が出払っておりましてな。今、お茶を淹れますから…」
ポーラー・タイを揺らしながらゆっくりと立上がる。
急に後ろに居た内藤が暴れだした。
「こらっ…大人しくしろっ」
ママさんが男らしい声を出して、内藤をパーテーションのこっち側に突き出した。
「あ…」
内藤はおじいちゃんを見ると、棒立ちになった。
「おや…和幸…」
おじいちゃんは、内藤を下の名前で呼んだ。