第14章 檸檬
「で、それで一体今になって…?」
ハンカチで汗を拭きながら、再び体勢を立て直した。
「パパという人のこと。もっと知りたいんです」
「え…?なんで今さら…」
「カズヤの前に現れたんです」
「えっ…だってここにはもう来てませんよ」
「以前のことで構いません。こっちはなんにも彼に関して情報を持っていませんから…」
「一体、何をしたんですか…内藤さんは…」
「カズヤを無理やり…」
「えっ…また!?」
持っていたハンカチを握りしめて、ママは唇を噛み締めた。
「あの野郎…」
低い、低い声だった。
思わず、俺と翔さんは目を合わせた。
「ママさん、俺たちに教えてくれませんか。内藤って人のこと」
翔さんがそっとママさんの腕に手をかけた。
「ええ…私にできることだったら…」
内藤という人は、ママさんの店の開店当初からの常連だった。
ママさんが二丁目をふらふらしてたカズヤを開店前の店に連れて行くようになって、内藤とカズヤは知り合った。
カズヤの身の上を話すと、内藤はいたくカズヤに同情して、ご飯を食べに連れていくようになった。
カズヤも内藤によく懐いて、そのうちパパと呼んで、後をついてまわるようになったということだった。