第14章 檸檬
誰もいないのはわかってるんだけど、言ってしまう。
ただいまって、とってもあったかい言葉だと思う。
”僕はここに帰ってきたよ”
そういう意味なんだから。
リビングに行くと、ソファに荷物を放り投げてキッチンに向かう。
冷蔵庫から水を取り出して、あおる。
「っは~…」
家に、帰ってきた。
この瞬間が好きだ。
俺の居場所…俺の家族の場所…
電気もつけないで、キッチンで水を飲んでいると玄関の方から音が聞こえる。
「ただいま~」
カズヤの声。
「おかえり~」
ぱたぱたとスリッパの音がして、リビングの扉が開く。
「ただいま、にーの」
「おかえりカズヤ」
ニッコリ笑うと、カズヤはキッチンに入ってきて、俺の持っているボトルを取る。
そのままきゅーっと水を飲んだ。
「おまえは…ちょうだいの一言が言えないの?」
「んふ…」
甘えるように身体を擦りつけてくる。
「だって、にーのだもん」
「ん?」
「俺、甘えてんの」
「あ、そ…」
もう俺よりも背が高くなった。
肩幅は俺よりも広い。
華奢な印象は変わらないけど、俺よりも男らしい外見になったと思う。