第12章 退紅(あらそめ)scene2
レギュラーの収録が終わって、ひとり地下駐車場で智くんが来るのを待っていた時、そいつは現れた。
「櫻井さん…」
振り返ると、みたこともない人が立っていた。
「どなたですか?」
少し身を引きながら、構えた。
ろくでもないことを持ってくるやつの雰囲気はみんな一緒で。
この人もその雰囲気を纏っていた。
「私、こういう者です」
名刺を差し出してきた。
フリーライター…
「あなたの事務所にいた…幹部の方…ご遺体で発見されましてね…」
にやりと男は笑った。
「私は、その事件を追ってるんです」
「…今、時間ないんです」
「あれ?驚かないんですか?」
「なにがですか…」
「だって…ほとんど報道されてないでしょ?この事件、ご存知だったんですか?」
「そりゃ、俺だって報道の人間ですから…」
「ああ…そうでしたね…」
くっくっくと嫌な笑い方をした。
「ちょっとお話伺えませんか…」
「無理です。時間ないんです」
「そんなこと言わないで…」
「警備呼びますよ」
「…いいですよ…じゃあ。大野さんにお話伺いますから」
思わず振り返った俺を、にやにや顔が捉えた。
「大野さんなら…よくご存知でしょうからねぇ…」
俺は…
俺たちはまだ。
亡霊に追いかけられてる…