第12章 退紅(あらそめ)scene2
智くんはイスに座ると、ニッコリ微笑んで手を合わせた。
「いただきます」
「…いただきます。智」
簡単な朝食だけど、なんだか胃に滲みた…
朝日を纏って微笑む智くんは、とても綺麗で。
やっぱり汚いものは全て洗い流してきたみたいな顔してて。
敵わないと思った。
どんなに俺が智くんを誰よりも愛してると自負してても…
きっとこの人の俺への深い愛には…一生敵わないんだ…
守っていると思っていたのに、守られてたのは俺の方だったんだ…
そんなことにも気づかせないくらい、智くんの愛は深いんだ…
「智…おいしいよ…」
「うん。よかった」
どうしたら…
どうしたらこの人に報えるだろう。
どうしたらこの人を一生守れるだろう。
それからの日々は、緩やかに流れた。
スキャンダルのことは尾を引いて、まだいろいろ報道されているらしい。
けど、10年以上前に終わったことだ。
俺達の間ではもう、過去のことで…
ひたすら前を向いて進むしかなかった。
メンバーそれぞれが苦い思いをしていたみたいだけど、それはおくびにも出さない。
時にファンにえげつないヤジを飛ばされたりもしたけど…
自分たちのやったことだから。
粛々と俺たちは仕事をしていた。