第12章 退紅(あらそめ)scene2
「大野を守りなさい」
「え…?」
「アイツのこと、嗅ぎつけられたのよ…ハイエナみたいなヤツに…」
「それを隠すため…?」
「そうね。そうなるわね」
「そんな大きなスキャンダル…」
「アヤって子のことよ。聞いたことあるでしょ?」
「あ…」
それは、まだ皆が若くて…
そういうことに興味がたくさんある年頃のことで。
すぐに皆飽きて、捨ててしまった女のことだった。
「あの子…死んだんじゃなかったんですか…」
「遺書やら日記やらが出てきたのよ…」
ふぅっとタバコの煙を吐き出すと、額を押さえた。
「もみ消したスキャンダルだったけど、これを表に出さないことには…」
「取引ですか…」
「そうよ…だから櫻井。大野を守ってね…」
それは、少し懇願を含んだ響きだった。
「わかり…ました…」
「いい子ね…」
幹部はまた俺の頭をなでて部屋を出て行った。
これから大きな波がくる。
覚悟しておかないと…
ぎゅっと拳を握った。
でも…
心のどこかで、アイツのことがバレない安心のほうが勝っていた。
あのことが明らかになるくらいだったら、こんなこと…
なんでもない…