第12章 退紅(あらそめ)scene2
レギュラーの収録終わりは、いつも一緒に部屋に帰る。
帰りは事務所の車だったり、俺の車だったり。
どんなときも、手を繋ぐ。
一緒に暮らすようになって、気分が変わったのかそれが習慣になった。
自分の車の時はハンドルを握っているときは繋げないけど、信号で止まると必ず手を繋いだ。
ぎゅっと手を握ると、智くんは俺を見上げて微笑む。
「どうしたの?翔ちゃん」
「ん…なんでもないよ?」
そういいながらも、目は智くんから離せない。
「むふ…信号、変わったよ?」
「あ、やべ…」
慌てて車を発進させると智くんが微笑むのがわかる。
たったこれだけ…
これだけのことで、とても幸せだった。
智くんの手に握られている、真新しいキー。
これは…
俺達のしあわせを開くキー。
アイツの事を智くんに知られることなく、無事に過ごしていたある日。
朝起きると新聞が数紙届いているので、いつも熟読している。
そのうちの1紙にアイツの事件の続報が小さく載っていた。
「白骨化死体の身元判明」
そうか…身元…わかっちゃったのか…
決定的な死因はつかめないらしい。
記事を眺めながら、コーヒーを啜った。
カップの中の水面に映る自分の目が、酷く冷めていた。