第5章 レイヴンscene2
身体が少し冷えた。
椅子から降りて立上がる。
振り返ると、ソファに凭れてクッションを抱きかかえた翔がこちらを見てた。
翔との生活も、また俺のリアル。
「おいで…翔…」
でも翔は動かない。
暗がりのなか、よくみると涙を流している。
クッションに顔を埋めてしまった。
「もう。寝る…」
そう言って、ソファから立ちあがって背を向けた。
そのまま寝室へ駆けていくから、腕を掴んだ。
「翔…なんで泣いてるの?」
「なんでもない…」
俺に顔を見せようとしない。
「顔、見せて…?」
頑なに見せようとしないから、最後には顎を掴んでこちらを向かせた。
「なんで…泣くの…?」
「知らない…」
くりくりとした瞳に、涙が溜まってくる。
一粒こぼれ出す度に、俺は唇でそれを拭った。
「ごめん…翔…」
きっと翔には、俺が潤のこと考えてたこと、わかってるんだ。
この聡明すぎる俺の恋人に、わからないことなんてないんだ。
「許して…俺のこと…翔…」
ぎゅうっと抱きしめた。
「俺のこと、見捨てないで…」
「雅紀…」
「翔…俺のこと離さないで…」
「…ないだろ…」
「…え?」
「そんなこと、できるわけないだろっ!」
翔は俺の腕を取ると、寝室へ連れて行って、乱暴に俺をベッドの上へ投げ出した。