第5章 レイヴンscene2
窓辺に雅紀が座ってる。
今日は綺麗な月夜。
それを見上げて、雅紀は物思いに耽ってる。
たまに、夜になるとこのイスに座って風景を眺めてる。
椅子の上で膝を抱えてる。
スエットの裾から少しだけ出した指先を膝に載せてる。
こんな時、話しかけない。
雅紀の頭の中にいるのは、俺じゃないから。
じっと、雅紀がこっちに帰ってくるのを待ってる。
ソファに座って後ろ姿を見てると、どこかに行ってしまいそうで…
本当は抱きしめて、めちゃくちゃにしてやりたい衝動に駆られてる。
でもじっとこらえて、クッションを抱えて待ってる。
俺が奪ってしまった、雅紀の時間を邪魔しないために。
雅紀の時間の中に住んでいるのは。
きっと潤。
視線の先の月は、とても綺麗で。
”月が 綺麗ですね”
”遠回りして 帰ろう”
そんな言葉を思い出した。
雅紀…今、どの辺歩いてるんだろ。
ちゃんと、俺のとこ帰ってきてくれるかな…
じわっと涙が溢れてくる。
いけない…
俺が泣いちゃいけない…
こんなに近くにいるのに、淋しい。
こんなに近くにいるのに、遠い。
雅紀、早く帰ってきて…
俺の元に。