第1章 ファンタジー、だからね?
(なんとか社長をお待たせしないように、定時には終われたものの...ノックするだけなのに緊張する。)
いざ社長室に辿り着いたものの、緊張からか、一歩踏み出せずにいる。【社長室】の札がかけられているそのドアに、二回ノックして入室すればいいだけの話し。それに、この後社長に用事があるとしたら、私のこのもたもたしている時間が社長のロスになり兼ねない。私のような社員とは違い、社長は会合や打ち合わせ、その他社長にしか出来ない仕事があるのだと、ふと冷静に考えた。
(適切な表現ではないけど、あたって砕けろ!私!)
私は意を決して、社長室のドアをノックする。
コン、コン。
「...どうぞ。」
社長の柔らかい声が私の耳に届く。
ドクン、ドクン。
たった一言だけなのに、これは私だけに向けられた「どうぞ。」なのだと思っただけで、ドキドキしてしまった。
「失礼します。」
ドアノブを回し、社長室へと入る。そこには、ただ1人が座ることを許される椅子に深々と、そして貫禄と圧倒的なオーラを纏った社長が居た。